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東京地方裁判所 平成9年(コ)36号 決定 1999年3月10日

申立人(債務者)

日東興業株式会社

右代表者代表取締役

山持巌

右代理人弁護士

阿部三郎

冨島照男

櫻井公望

國武格

高木徹

寺島秀昭

木下秀三

須藤修

関内壮一郎

渕上玲子

山本真弓

松留克明

太田治夫

主文

別紙和議条件による和議を認可する。

理由

一  和議の可決

平成一一年二月三日午後二時に開催された債権者集会期日において、申立人が提供した別紙記載の和議条件による和議(以下「本件和議」という。)が可決された。すなわち、議決権を行使することができる出席債権者三万六五〇八人のうち三万三四三二人が本件和議に同意し、その債権額は合計一八三四億七一六三万四二二四円であった。これは、和議の可決に要する出席債権者数の過半数、議決権を行使することができる届出債権総額二三四四億九三〇〇万二四五九円の四分の三以上に当たる。

二  和議不認可事由の存否

1  各債権者の平等について

(1)  本件和議条件においては、申立人の運営するゴルフ場の会員である債権者(預託金返還請求権を有する和議債権者。以下「会員」という。)で本件和議条件に定める期間内に退会届出をしなかった者(以下「プレー会員」という。)は、和議債権元本について免除をしないが平成二五年九月三〇日まで弁済を受けられないのに対し、他の和議債権者は和議開始決定後の利息及び損害金のみならず和議債権元本の八二パーセントを免除した上で同日までに和議条件に基づく弁済を受けることになっており、別異の取扱いをしている。ところで、預託金制ゴルフ場の会員の有する権利の主たるものはゴルフ場施設の優先的利用権(以下「プレー権」という。)と預託金返還請求権であり、会員は退会をしてプレー権を喪失しなければ預託金返還請求権を行使しえない、すなわちプレー権を保有している限り預託金の返還請求はできないという点で、単純な金銭債権者とは異なる特殊性を有している。したがって、会員に退会をするかしないかの選択権を与えた上で、退会を選択せずプレー権を保有し続ける会員と退会を選択した会員及び他の和議債権者を別異に取り扱うことも、合理的理由があるといえる。本件においては、プレー会員は債権元本を免除しないという点で他の和議債権者よりも有利な扱いを受ける一方で、一五年間弁済を受けられないという制約を受けるのであり、プレー会員と他の和議債権者とを別異に取り扱った本件和議条件が各債権者の平等に反するものとは認められない。

(2)  本件和議条件においては、プレー会員は、平成二五年一〇月一日以降に預託金返還請求権を行使するに際して、申立人に対する退会希望者の預託金返還請求権の合計額が一定額を上回った場合には、抽選に当選しなければ預託金の返還を受けられないと定められている。ところで、一件記録によれば、平成二五年一〇月一日以降も一定額以上の預託金返還請求権の行使があった場合、申立人が支払不能状態に陥るおそれがありこれを避ける必要があることが認められ、全ての退会を希望するプレー会員に抽選を受ける権利があること及び抽選に落選した者はプレー権を失わないことをあわせ考えると、この和議条件が各債権者の平等に反するものとは認められない。

(3)  本件和議条件においては、その債権元本額が三〇万円以下の和議債権者(以下「少額債権者」という。)については、他の債権者に比し、その弁済率及び弁済期間が有利に設定されている。しかし、有利に取り扱われているのは少額債権者であり、しかも、一件記録によれば、右少額債権者への弁済総額は約六〇〇〇万円であって、議決権を行使することができる届出債権総額二三四四億九三〇〇万二四五九円の約〇・〇二六パーセントに過ぎず、右弁済によって他の和議債権者への弁済率や和議条件の履行に支障が生じる事情は認められない。したがって、本件和議条件における少額債権者の扱いが、各債権者の平等に反するものとは認められない。

2  和議の決議が不正の方法によって成立したかどうか

(1)  本件和議について、申立人の贈賄による賛成票の勧誘行為があったこと及び申立人が特定の和議債権者に対して申立人の取締役への就任を約束して和議への賛成を勧誘したことの指摘がなされている(和議債権者Aの平成一一年一月二九日付上申書及び平成一一年三月九日付和議不認可理由書(1)、和議債権者Bの平成一一年二月一日付上申書、和議債権者Cの平成一一年二月一〇日付書面、和議債権者Dの平成一一年三月二日付陳述書)。しかし、整理委員と管財人の平成一一年三月九日付和議手続に関する調査報告書(2)、申立人の平成一一年二月八日付の「「平成一一年一月二九日付上申書」に対する反論及びその疎明」と題する書面、申立人の平成一一年二月一八日付の「「平成一一年二月一〇日付書面」に対する反論」と題する書面、和議債権者Eの平成一一年二月一〇日付の「平成一一年一月二九日付日東興業全国ゴルフ場会員連絡協議会会長A氏の「上申書」に対する反論書」と題する書面、申立人の平成一一年二月二四日付副申書(平成一一年二月一九日付和議債権者Fの上申書添付)に照らせば、指摘のような事実を認めるに足りない。

(2)  申立人が一部の会員との間において、申立人所有のゴルフ場に賃借権を設定すること及び申立人の株式を預託することを約することによって、他の和議債権者に比べて有利な条件を付与し、また、ゴルフ場に対する賃借権設定が可能である旨の説明を会員に対して行って和議賛成への勧誘を行い、不正な方法により和議の成立を図ったとの主張がなされている(和議債権者G及び和議債権者Bの平成一一年二月一八日付上申書)。しかし、整理委員と管財人の平成一一年三月五日付和議手続に関する調査報告書(1)、申立人の平成一一年二月八日付の「「平成一一年一月二九日付上申書」に対する反論及びその疎明」と題する書面、申立人の平成一一年二月二四日付副申書(平成一一年二月一九日付和議債権者F作成の上申書添付)に照らせば、和議の決議が不正な方法によって成立したことを認めるに足りない。

3  その他の和議不認可事由の存否

(1)  債権の届出に関し、債権届出期間経過後に届け出られた和議債権にも議決権が付与されているが、債権届出期間経過後に届け出られた債権については議決権を行使させるべきではないとの主張がなされている(和議債権者G及び和議債権者Bの平成一一年二月一八日付上申書)。しかし、債権届出期間経過後に届け出られた債権につき、管財人と整理委員がこれを債権調査の対象とすることを禁ずる規定はなく、このような債権をどのように取り扱うかは、第一次的には管財人と整理委員の判断に委ねられている。本件において、当裁判所は平成一〇年七月三日に和議開始決定をし、債権届出期間を同年八月三一日、債権者集会を平成一一年二月三日と定めたが、当裁判所が債権届出期間の終期をこのように早い時期としたのは、裁判所が和議開始決定の通知をした和議債権者数は約五万四〇〇〇人と膨大な数に上るところ、管財人と整理委員は債権者集会までに届出債権について調査を遂げる必要があり、そのための期間を見込んだためである。この事情に加えて、本件債権届出期間及びその後の債権者集会までの管財人と整理委員の債権調査事務の進捗状況やその他の事務処理状況(整理委員と管財人の平成一一年三月五日付和議手続に関する調査報告書(1)参照)に照らすと、管財人と整理委員の本件債権調査手続が違法であるということはできない。

(2)  申立人は、偏頗な内容を掲載した意見広告を新聞、雑誌及びインターネット上において行ったり、同様の内容の会員誌を会員へ送付したりしており、これらのための費用の支出は不当なものであるとの主張がなされている(和議債権者Aの平成一一年一月二九日付上申書、和議債権者Bの平成一一年二月一日付上申書、和議債権者Hの平成一一年二月八日付書面、和議債権者Dの平成一一年三月二日付陳述書)。しかし、整理委員と管財人の平成一一年三月五日付和議手続に関する調査報告書(1)、申立人の平成一一年二月八日付の「「平成一一年一月二九日付上申書」に対する反論及びその疎明」と題する書面に照らせば、右意見広告等に関し、本件和議を不認可とすべき事由があるものはいいがたい。

(3)  申立人には、粉飾決算があったとの主張がなされているが(和議債権者Dの平成一一年三月二日付陳述書)、一件記録に照らすと、右主張とともに提出された資料をもってしても本件和議を不認可とするべき事由があるものとはいいがたい。

(4)  本件和議の決議は和議債権者の一般の利益に反する等との主張がなされているが(和議債権者Aの平成一一年三月九日付和議不認可理由書(1))、平成一〇年六月一二日付整理委員の意見書及び平成一〇年一二月一〇日付和議管財人の報告書に照らせば、本件和議の決議が和議債権者の一般の利益に反するものとは認めがたい。

(5)  その他、一件記録を精査しても、本件和議を不認可とするべき事由が存在するものとは認めがたい。

三  結論

よって、本件和議を認可することとし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 園尾隆司 裁判官 瀬川卓男 真辺朋子)

<別紙>和議条件(日東興業株式会社)

第一 一般和議債権者(第二及び第三記載の債権者を除く)について

一 一八%の弁済

債務者は一般和議債権者に対し、平成一三年から平成二五年まで毎年九月三〇日に和議債権元本額に対する下記の割合(合計一八%)による金員を支払う。

<1> 第一回 平成一三年九月三〇日

和議債権元本額の一%

<2> 第二回 平成一四年九月三〇日

和議債権元本額の一%

<3> 第三回 平成一五年九月三〇日

和議債権元本額の一%

<4> 第四回 平成一六年九月三〇日

和議債権元本額の一・五%

<5> 第五回 平成一七年九月三〇日

和議債権元本額の一・五%

<6> 第六回 平成一八年九月三〇日

和議債権元本額の一・五%

<7> 第七回 平成一九年九月三〇日

和議債権元本額の一・五%

<8> 第八回 平成二〇年九月三〇日

和議債権元本額の一・五%

<9> 第九回 平成二一年九月三〇日

和議債権元本額の一・五%

<10> 第一〇回 平成二二年九月三〇日

和議債権元本額の一・五%

<11> 第一一回 平成二三年九月三〇日

和議債権元本額の一・五%

<12> 第一二回 平成二四年九月三〇日

和議債権元本額の一・五%

<13> 第一三回 平成二五年九月三〇日

和議債権元本額の一・五%

二 八二%の免除

債務者は一般和議債権者に対し、平成二六年九月三〇日に和議債権元本の八二%の金額並びに和議債権に対する利息及び損害金を支払う。但し、債務者が期限内に右一の<1>、<2>及び<3>の支払(合計三%)をしたときは、本項本文の債務の全額につき免除を受ける。

三 ゴルフローン債権者について

債務者の連帯保証を受け会員が主たる債務者(以下「ゴルフローン債務者」という)であるゴルフローン契約について、ゴルフローン債務者が約定の割賦金の支払を遅滞し、債権者が債務者に残金全額の請求をした場合、支払期日は平成一三年九月三〇日以降で債権者が請求した日以降最初に到来する九月三〇日を第一回とし、右一、二を適用する。

第二 会員について

一 退会者

会員(預託金返還請求権を有する債権者。以下同じ。)のうち和議認可決定確定後三ヶ月以内に退会届出をした者(認可決定確定時に退会ずみの者を含む。以下「退会者」という。)の有する預託金返還請求権の弁済と免除については、第一または第三を適用する。

二 プレー会員

1 平成二五年九月三〇日まで

右一の退会者を除く会員(以下「プレー会員」という)。は、平成二五年九月三〇日まで預託金返還請求権を行使せず、入会しているゴルフ場の優先的施設利用権(以下「プレー権」という。)を行使する。

2 平成二五年一〇月一日以降

平成二五年一〇月一日以降、退会を希望する会員は(以下「退会希望者」という。)は次の方法により預託金返還請求権を行使することができる。

<1> 債務者は毎年度金一〇億円を限度として、毎年九月三〇日までの退会希望者に償還する。

<2> 毎年九月三〇日までの退会希望者の預託金返還請求権の合計額が右<1>の償還金額を超えた場合は、抽選で当選した者に償還する。

<3> 右<1>及び<2>の償還期日は、当年一一月三〇日とする。

<4> 退会希望者は、償還を受けるまでの間、会員としての地位を有する。

3 ゴルフ場ごとの決定

平成二五年一〇月一日以降、ゴルフ場ごとに四分の三以上のプレー会員(正会員以外の会員については、〇・五人として計算する)が下記の事項を請求した場合は、債務者はこれに従う。

<1> 株主会員制への移行

<2> ゴルフ場の売却による預託金の回収

4 プレー権の喪失

平成二五年九月三〇日までの間に、やむを得ずゴルフ場が担保権の実行またはそれに代えて任意売却され、プレー権を喪失したプレー会員には、第二の一を適用する。但し、支払期日については、プレー権喪失日以降最初に到来する九月三〇日を第一回とし、以下これに準ずる。

第三 少額債権について

債務者は金三〇万円以下の和議債権者(これを超える債権の一部を放棄して金三〇万円とした債権者を含む)に対し、平成一三年九月三〇日に和議債権の全額を支払う。

第四 劣後債権について

債務者は和議開始決定後の利息及び損害金につき免除を受ける。

第五 その他

一 私財の提供

松浦均が現在所有するすべての不動産は未完成の双園ゴルフクラブ(会員募集ずみ)を完成させるために提供する。

二 履行状況の監督

平成二五年九月三〇日まで和議条件の履行状況を監督するため、次の措置を講じる。

1 監査法人の監査を受け、計算書類及び監査報告書の写しを本店及び各ゴルフ場に備え置き、閲覧に供する。

2 プレー会員及び学識経験者らで構成される監督機関を設置する。

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